樋門・樋管(以下、樋管)は、農業用水の取得や排水機場からの排水を目的とした、堤防を横断する暗渠形式の水路構造物です。堤防を連続構造物としてみたとき、堤防の一部を樋管で置換することによって、その部分は堤防の弱点にもなっています。樋管が作られる場所は一般に軟弱地盤であり、従来の樋管は杭基礎となっています。このような場所で地盤沈下が発生すると、樋管周辺に、クラックや抜け上がりのような変状が観察されるようになります。変状進行のプロセスを考えると、函体周辺の堤防部に空洞が発生していることが予測されます。
空洞はパイピング発生の原因となり、堤防の安全性を損ないます。樋管周辺に異常が見つかった場合には早期に点検を行い、適切な処置を行うことが必要です。
堤外地から見た樋門の様子
樋管周辺に見られる変状の例
支持杭基礎の場合、沈下が進行すると空洞が発生します。これらの空洞がつながって水みちが形成されると、それにともなう変状が現れてきます。止水矢板の側方を迂回する水が土を浸食すると、堤体内に空洞が発生する場合があります。この伏在空洞が上部の荷重等により潰されると堤体の陥没となります。さらに進行して、川裏にまで水みちができあがると、堤内地に砂の流出等が観察されるようになります。もはや、止水矢板がその機能を果たしていない状況です。 樋管壁面のクラックやコンクリートの劣化、継ぎ手の開口なども漏水の原因となります。樋管内部の点検も重要です。
調査の流れ
(樋門等構造物周辺堤防詳細点検要領平成24年5月、国土交通省水管理・国土保全局治水課)
門柱と翼壁の開き(1.3cm)
側壁のひび割れと漏水、錆汁、遊離石灰
継手の開き(止水板も切れている)
連通試験は遮水矢板を挟む位置で底版を削孔して複数の試験孔を設置し、そのうちの1孔へ注水し、他孔の水位変動を測定するものである。この時の注水孔と測定孔の水位変動量および注水により測定孔の水位が変動するまでの時間差などから基本応答曲線、応答相関図を作成し、底版下の空洞の状況や遮水矢板の止水性などを判定する。
連通試験の原理
連通試験結果の例
この図の例では、No.2孔とNo.3孔は連通しているが、No.1孔とNo.4孔はどの孔とも連通していないことが読み取れる。
1.鉄筋探査
2.底版削孔
3.塩ビ管建込み
4.注水状況
5.測定状況
6.孔内ファイバースコープ観察
孔内観察(空洞は確認されない)
孔内観察(8cm程度の空洞が確認される)