弾性波探査

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弾性波探査

ELASTIC WAVE PROSPECTING

弾性波探査とは、地下を伝わる弾性波が物性(主にP波速度、S波速度および密度)の異なる境界で屈折や反射などの現象を生じることを利用して、地下構造を調査するための手法です。
代表的な探査法として、屈折波を利用する屈折法と反射波を利用する反射法があります。

公開技術資料 - 「弾性波探査の概説」

  • 「弾性波探査の概説」は平成8年10月に当社から発表された技術研究資料です。
    弾性波の特徴から、探査法、解析法など基礎から詳しく説明しております。

    ここではPDF形式で公開していますのでご自由にダウンロードの上、ご参照下さい。(※ダウンロードしたファイルを無断で転写、改変、及び再配布することを禁止します。)

    弾性波探査の概説 (2.39MB)

    製本での配布も行っておりますので、ご入用の方はこちらの案内にしたがってご請求ください。

屈折法地震探査

  • 屈折法地震探査は、地盤構造を弾性波が伝わる速度の違いとしてとらえる手法です。弾性波速度からは地盤の硬軟などの工学的情報を得ることができ、その構成状況から地質構造等を推定することにも利用できます。土木・建設の分野では弾性波探査といえば屈折法地震探査のことを指します。弾性波探査で求められる速度値は、信頼性が高いとともに地盤強度との相関性が良く、岩種と弾性波速度から岩盤分類や地山区分の情報として利用されており、設計・施工時の有益な情報を関連技術体系に提供するものとして重要です。これらの特徴を生かして、土木構造物や資源開発および一般地質構造調査などを目的として広範囲に利用されています。

    屈折法地震探査では、地表付近で弾性波を発生させて地表の測線上に適当な間隔で展開した複数の受振点(振動計)でその波動を測定します(屈折法地震探査模式図)。
    波動のうち受振点にもっとも早く到着する波を初動と呼び、初動が確認できる記録をとる必要があります。振源距離が近い場合には、第1層を最短距離で伝播する直接波が初動となり、振源距離がある程度遠方になると屈折波が初動となります。これを図1で説明しましょう。

    最も簡単な水平2層構造を考え、上層の第1層の速度をV1、第2層の速度をV2とします。ここで、V1 < V2とします(一般的な環境では地層速度は深部ほど速くなっています)。波動の到達時間を振源との距離でプロットした図を走時曲線図と呼びます。TV1は第1層中を最短距離で伝播する直接波です。T2は境界面で臨界屈折(図2)して境界面付近の第2層を伝播し、再び臨界屈折角で第1層に戻って地表で観測される臨界屈折波です。弾性波探査ではこの波を単に屈折波と呼び、屈折法地震探査の名称の由来です。ここでは証明はしませんが、臨界距離より遠方では臨界屈折波がもっとも早く観測点に到着して初動となります。解析に用いるのは、直接波と屈折波です。

    図1.水平2層構造と走時曲線の模式図

    図2.臨界屈折とスネルの法則

  • 図1は、水平2層構造で得られる走時曲線の模式図です。
    T1は直接波の走時、T2は屈折波の走時を示しています。各直線の傾きは、各層中を伝播する弾性波速度の逆数となっています。

    図2は、臨界屈折を説明するものです。速度の異なる均質物質第1層と第2層が境界面Rで接しています。速度はV1 / V2です。第1層側から波動が入射します。入射角をθ1、屈折角をθ2とすれば、その角度は伝播速度V1とV2の比によって決まります。つまり式では sinθ1 / sin θ2 = V1 / V2 であり、これをスネルの法則といいます。入射角を大きくとっていくと、ついには屈折角が90度となり境界面に沿った波が観測されます。このときの入射角を臨界屈折角といいθ12と表します。sin90°= 1ですから、
    sinθ12 = V1 / V2
    となります。

    これは屈折法地震探査で使用する基本原理で、屈折波は臨界屈折によって説明されます。

  • ワンポイント

  • 私たちは、よく屈折現象を体験しています。水を入れたコップに真直ぐなはずのストローを挿したとき、折れ曲がって見えたことがあるでしょう?
    光の屈折により、このように見えるのです。

反射法地震探査

  • 反射法地震探査は、地表で衝撃波または連続波を発生させ、地下の反射面(音響インピーダンスの変化する境界面)から反射して地上に戻ってくる反射波を、地表に展開した受振器で測定し、解析して地下反射面の深度分布、地下構造を探査する方法です。反射法でもっとも特徴的なのは、共通反射点(CMP)重合という方法でデータ処理を行うことで、微弱な反射波を強調させ、各共通反射点ごとに反射波形を並べること、視覚的に地下構造がイメージできる点にあります。

    測定は、起振点と地震計の配列を一定に保ったまま、起振を続けながら進んでいきます。海上で行うマルチチャンネル音波探査はこれが簡単にできます。陸上の場合は、測定が終了した区間の地震計やケーブルを測定しようとする測線前方に補充していかなければなりません。

    反射法地震探査の模式図

リフラフォン

  • 弾性波探査屈折法は、土木建築分野で最も利用されている物理探査法です。一般に、地盤は硬くなるほど弾性波速度が大きくなります。土質地盤や軟岩では、固結度や一軸圧縮強度などの工学的インデックスと弾性波速度の間に強い相関関係が認められます。また硬質岩盤においては、岩質、岩石の硬軟、風化・変質の程度や割れ目状態によって弾性波速度が変化します。弾性波探査屈折法は弾性波の速度分布から地盤状況を間接的に推定する技術です。

    リフラフォンシステム
    (1)記録船(器) (2)水中受振器 (3)発振船 (4)水中発振器 (5)水中測深器 (6)屈折波

  • 海上における弾性波探査屈折法は、海上構造物の建築や海底下のトンネル掘削に先がけて実施されます。けれども海上での調査という特別な環境下では、陸上と同じ機器を使うことができません。また機材の耐水性を強化しても、作業能率がかなり低下します。リフラフォンは陸上での弾性波探査屈折法と同様の成果が期待でき、さらに作業能率を飛躍的に向上させた海上における弾性波探査屈折法の計測システムです。特に交通量が多い航路や、潮流の速い海峡部ではリフラフォンの威力が発揮され、皆様からこのシステムの優位性を認めていただいています。

    水中受振器の設置状況

  • 通常の弾性波探査では多数の受振点に地震計を配置し、所定の間隔に起振点を設けます。いっぽうリフラフォンでは所定の間隔に専用受振器を配置し、生物に損傷を与えない起振を細かな間隔で繰返して計測を行います。このように起振と受振の関係を入替えても、得られるデータが変わらない性質を利用することによって、作業効率が大幅に向上し、その結果コストを低減することができます。

  • エアガン投入状況

    小型発振船の小型エアガン

トンネルHSP

  • トンネルHSPの基本技術はトンネル坑内で実施する弾性波探査です。 2次元の擬似地質断面が得られる点が特長で、擬似断面には切羽前方部の地層や断層等の情報が含まれています。 それらの位置や規模等を的確に評価するには単なるデータ処理だけではなく、事前の地質調査、切羽の観察、 施工実績データを加味して、総合的に解析することが必要です。 その結果、単独で実施する他の調査方法に比較して、より精度が向上しています。

  • トンネル側壁に設置した受振器群

    換振器の設置

    換振器の設置