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遺棄化学兵器について

1,遺棄化学兵器とは

遺棄化学兵器は化学兵器禁止条約 (※1)により以下のように定められています。

「1925年1月1日以降にいずれかの国が他の国の領域内に当該他の国の同意を得ることなく遺棄した化学兵器(老朽化した化学兵器を含む)をいう(第二条六項)。」

「老朽化した化学兵器」とは、次のものをいう。
(a)1925年より前に生産された化学兵器
(b)1925年から1946年までの間に生産された化学兵器であって、化学兵器として使用することができなくなるまでに劣化したもの(第二条五項)。

2,化学剤の特徴

化学兵器とは、化学物質の有する毒性や刺激性などを利用して生物に害を与える兵器をいいます。利用される化学物質を化学剤といいます。その多くはガス状か揮発しやすい液体です。地下鉄サリン事件で有名なサリンも神経を冒す化学剤です。遺棄化学兵器のほとんどが砲弾で、その内容物として化学剤が充填されています。

旧日本軍で生産・保有された化学剤の特徴を以下にまとめました。

化学剤の特性

3,遺棄化学兵器はどこにあるのか

旧日本軍の遺棄化学兵器の多くは中華人民共和国内に存在します。戦争時、日本国内で生産された化学剤および化学兵器が中国国内に持ち込まれ、敗戦時に中国国内に大量に遺棄されました。その数は推定70万発と言われております(中国側は200万発と主張)(※2)

弊社では平成7年から中国国内における遺棄化学兵器の調査を何度か行ってきました。調査によってこれまで数万発の遺棄化学兵器の位置と数量に関する情報を提供するとともに、掘削・回収作業の安全化に貢献してきました。

日本国内に存在した化学剤および化学兵器は、終戦時から米軍進駐前に埋設、海中投棄、焼却処分されました。米軍進駐後は、米軍監視の元で海洋投棄または焼却破壊されました。平成15年11月に環境省で実施した昭和48年の「旧軍毒ガス弾等の全国調査」フォローアップ報告書によると、旧日本軍毒ガス弾等の生産・保有状況については全国で34箇所、廃棄・遺棄状況については44箇所の地域が報告され、発見・被災・掃海等の処理状況については823件の報告がありました(※3)

寒川、平塚で検出された化学剤は旧日本軍で生産され、終戦時遺棄された可能性が高いものです。

このように戦後50年以上経った現在でも、旧日本軍による負の遺産が我々の安全を脅かしているのです。


※1 化学兵器の使用だけではなく、開発・生産・貯蔵なども禁止し、保有国には廃棄を義務づけた条約。1992年11月国連採択、1997年4月発行。日本は1995年9月に批准した。詳細は外務省ホームページ参照。

※2 内閣府遺棄化学兵器処理担当室ホームページ参照。

※3 環境省ホームページ参照。

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